家族を自死という形で亡くした心の傷は大きく深く、その思いは実に複雑です。
突然の喪失のショックはもちろんの事、自責の念、後悔、悲しみ、無気力、時には怒りも。遺された人は故人との関係性により様々な感情を抱きながら生きていくことになります。
それだけではありません。一歩家を出れば社会の「自殺」に対する偏見にも苦しめられます。
それらの感情や環境の中で、それまでできていたはずの家事や仕事、あるいは学校生活が以前のようにできなくなり、感情の波が抑えられず、対人関係に自信がなくなったりと、遺族は生き続ける事さえ困難になってしまうのが現実です。
しかし辛さを顔に出せば「いつまで悲しんでるの」「あなたが元気にならないと故人が悲しむよ」と言われ、明るくふるまえば「もう元気になったんだ」「強いね、私だったら立ち直れない」と言われ、その度に心がさらにえぐられるのです。
自死遺族への支援として各自治体は相談窓口を設置しカウンセラー等を配置したり、分かち合いの場を設けたりしています。また各地で遺族が自ら分かち合いの会を立ち上げるようになり、遺族は自分に合った場を選ぶことができるほどになりました。
また、自らの判断で心療内科などに出向き診察やカウンセリングを受ける方もいることでしょう。あるいは宗教や精神世界に安らぎを得ることもあるかもしれません。自分の心にしっくりくるのなら、どれも正解だと思います。
しかしそのどれも自分には合わないと思ったり、自分の苦しみや悲しみは他人と共有できない(したくない)と考えている人たちもいます。また、遺族としての悲嘆を抱え、悲しいまま生きていこうと選択する遺族もいることでしょう。でも、どこにも頼らない方たちは疲れてしまった心を回復させる手段がありません。
傍目には立ち直っているように振る舞い、仕事も問題なくこなし、問題なく社会生活を送っている「ふり」ができてしまう人は、心にまとった鎧をいつ脱ぐのでしょう。 そんな方たちが「どうしようもないほど辛くなったらあの場所に行こう」と心の支えにできる場所を私たちは作りたいと考えました。
そこで私たちが用意するのは、人に会う煩わしさがほとんどなく、日々の生活から(時には家族からさえも)離れ静かな時間を持ちたいという気持ちに応え、しかし1人旅のようにあてもなくというものではない場所―自分のために用意された保養所であり、レスパイト(一時的な休養)をし回復するための場所です。
全ての自死遺族にとって、このような場所を知っている事で、逃げ場がない(逃げたくない)辛さをわずかでも減らせると信じています。
遺族にはそれぞれ自分に合った辛さの回避の方法や、受け止められる心のあり方について、より多くの選択肢があって欲しいと願っています。今では全国各地に分かち合いの会が増え、自分に合った場所を選ぶことができますし、行政が提供するサービスにも選択肢が増えてきました。これに「レスパイトハウス」という選択肢を増やす事で、毎年増加し続ける自死遺族が少しでも生きやすい社会に変えていけると私たちは考えています。
予定地にはまだ何も建っておりませんが、共感していただける方々によるご寄付で、お風呂とトイレ、ミニキッチンを完備した宿泊施設を完成させたいと考えております。
※2022年3月に完成しました。皆様の暖かいご支援に心から感謝いたします。
私たちは自死遺族当事者としての視点をもとに始めた団体ですが、レスパイトハウスプロジェクトについては受け入れを自死遺族だけではなく、事故遺族や事件被害者、そして事件加害者の家族にも受け入れの枠を広げていきたいと考えております。これは私たちが遺族になり活動している中で、事故事案のご遺族とも交流し事件事故の被害者や当事者の方達にも間違いなく必要な場であると知ったからです。
私たちは支援の専門家ではありません。専門家の分野に入り込むのではなく、あくまで当事者としての目線での相互支援を目的としています。それぞれの立場でできることを持ち寄り、より良い社会に向けて協力し合えたらと考えています。
全国各地の諸団体及び有識者の方々のご活躍に加えて、私どもの提供する場の存在が、これまで重い十字架を背負って生きてきた多くの方々の癒しになることを願い、業務や立場を超えた連携と協力を皆様にお願い申し上げます。
2011年に我が子を自殺という形で亡くした私は、今なお深い悲嘆の中で生きています。しかし、我が子を救えなかったという後悔の気持ちを抱きながらも、死の背景になにがあったのかを追及し活動し続けてきたことで、それまで気にも留めなかった社会の問題を多く知ることになりました。 さらには、「自殺」という亡くなり方に対しての社会の偏見を身を持って知る事となりました。自死遺族として生き続けるという現実を当事者になり初めて知ったのです。
それは、それまで自殺についてのニュースを見聞きする度に、亡くなった方を「かわいそうに」と思う事はあっても、そのご家族や周りの人達がその後の人生をどのように生きていくのかということについて全く思いを馳せる事のなかった私に大きな気づきと反省をもたらしました。 人生を安穏と生きてきた私が、我が子の死によって初めて他者への無関心と自分自身の中の宿題に気づかされたのです。
日々の忙しい生活の中でほとんどの人が「こんなものか」と通り過ぎてしまいそうな問題を、亡くなった方たちは「死」という形で表面化させてくれています。私たちは遺された者として、少しでも彼らの声なき声を受け止めたいと考えています。そして遺された全ての方が、亡き人への思いを心に大切に抱きながら生き続けるためにできることを、共に模索していきたいと考えています。
代表理事 山田優美子
一般社団法人カナリアハートは、遺族当事者という立場でできる
助け合いを目的とした小さな団体です。3名の理事はそれぞれ、
個人として遺族支援(裁判支援、遺族の分かち合い)や、講演、
教職課程の大学生向けの講義など多岐にわたり活動してまいり
ました。
この度、法人設立によりこれまでの活動に加え、レスパイト
ハウスプロジェクトを皆様のお力添えをいただきながら進めて
まいりたいと考えております。
これまで多くの専門家の方々から支援をされてきた自死遺族
ですが、この法人については「当事者ならではの視点」を大切に
したいと考えております。
しかしこのミッションを進めるにあたり、まだまだマンパワー
が足りません。経理、web、設計などの知識をお持ちの方で、
このプロジェクトに共感しご協力いただける方を募集します。
新しい取り組みにどうぞ皆様のお力をお貸しください。
代表理事 山田優美子
理事 安達和美
理事 井田紀子
法人名 |
一般社団法人カナリアハート |
---|---|
事務局 |
愛知県刈谷市半城土町北十三塚1-18 レスパイトハウス:鹿児島県屋久島某所 |
電話番号 |
080-5125-0024(非通知設定は不可) |
代表理事 |
山田優美子 |
設立 |
2018年6月14日 |
設立 |
2018年6月14日 |